第17回あたらしい創作絵本大賞 審査結果

大賞作品は、出版されます。
あたらしい創作絵本大賞は、こどものためのロングセラー絵本を創作する人を発掘していくコンテストです。
たくさんのご応募ありがとうございました。
表彰式は9月5日(土)に行います。
詳しくは、第17回あたらしい創作絵本大賞 表彰式のご案内をご覧ください。
各賞の審査結果は以下の通りです。
■大賞
「おばけのランタン」 ミドリノハッパ
●プロフィール
1999年生まれ
愛知県在住
名古屋造形大学 イラストレーションデザインコース 卒業
名古屋造形大学大学院 先端表現 修了
大学の頃から現在まで独学で絵本を勉強中
地元の山の中でデザインの仕事をしています。
●受賞コメント
この度は大賞に選んで頂きましてありがとうございます。
この物語は、おばけとおばけの形をした小さなランタンが出会うお話です。
物語の中で特別なことが起きたり、キャラクターに大きな変化があるわけではありませんが、
おばけの日常で起こった出来事を切り取ったような物語を意識して制作しました。
作品としてまだまだ拙い部分がありますが、いただいた評価を念頭に
これからも絵本作りを続けて行きたいと思います。
■優秀賞
「あるひこたつがいいました」 むぎはら
■佳作 5作品
「そんなのやだよ!」よこた あきみつ
「えいゆうのせきぞう」辻原 謙一
「ピューンととぶ きんのすけ」むらかみ なな
「シャワーバケーション」やまいり もい
「おひるねびより」愛弓
おしくも選外
「よふかしマオのおたんじょうびプレゼント 」
書店員さんからの評価も高く、そのままでも絵本にできそうなレベルでした。
入選者との差は、ほぼないです。
作者ならではのオリジナルな展開や持ち味があると、さらによくなりそうです。
作品選考の際には、審査を公平にするため、作者プロフィールは確認せず、作品のみを読んで審査しています。
審査員総評(50音順)
香曽我部 秀幸
『おばけのランタン』モノクロームを基調とした画面に黄色1色のみを使って、おばけとランタンを描いた瀟洒な描写は、審査員一同の眼をひきました。お話も何かドラマチックなことが起こるわけでもなく、物静かに時間が経過していきます。全体の統一感が心地良く感じました。ただ詞(ことば)の表現は粗さが気になります。ムードに流されず、時間経過や前後関係の的確な表現を心がけてほしいと思います。
『あるひこたつがいいました』コタツがある日突然立ち上がって外に出かけるお話は、奇想天外のように見えて案外誰もが思いつく展開ではありますが、発端から結末まで起承転結が齟齬もなくすっきりとまとまっています。コラージュ風の画面も色彩のバランスがお洒落で目に心地良く映ります。ただエピソード自体は月並みで、もっと冒険しても良かったかなと思います。
『ピューンととぶ きんのすけ』原画を見ていないので、本当にコラージュなのかCGなのか判断がつきませんが、色染め和紙をちぎって貼り合わせたような画面にはエネルギッシュな美しさが感じられ、お話も作者の”語る喜び”が伝わって来るようです。
『おひるねびより』の柔らかで温かい曲線、『えいゆうのせきぞう』の遠近感を強調した劇的空間の演出など、この2作品は絵の表現力においては群を抜いていました。画力はすでにプロの水準に達していると言っても良いと思われます。ただ、お話の既視感を拭い去ることはできません。今一つ物語に深みを持たせる工夫を望みます。
長野ヒデ子
あたらしい創作絵本大賞にご応募ありがとうございます。
みなさん力作ぞろいでびっくりですが、このコンクールの大賞作品は出版されるというすばらしい特典があります。
いろいろな賞がありますが、受賞したからといって、それが出版されることはほとんどないです。この賞は実にラッキーなことに堂々と出版されるのです。すごいコンクールなのですよ。
だから出版と考えると、大事な要点を満たしているかなどを考えると実に難しい問題がいろいろあります。
受賞だけなら、これを押したいと思う作品でも、出版となると少し違ってきて、店頭に並び読者が気に入ってくれる事が大事な条件でもあるのです。
アイデアがいい、絵がうまい、お話が巧みでよくできている、だけでは出版にはならないのです。これはコンクールでなくても出版とはそういう大変な力を持った作品が選ばれるのです。だからこのコンクールの大賞は、出版にこたえられる作品ででなければ選ばれないのです。その難しい難関をクリアした大賞の『おばけのランタン』おめでとうございます。視点が面白く詩情あふれる絵ですね。
『あるひこたつがいいました』や『シャワーバケーション』はアイデアは面白いけど、もうひとつはじけたところが欲しかった。個人的には『ピューンととぶ きんのすけ』は気持ちが良い作品で、よくある貼り絵作品の枠を超えて愛情があり、丁寧な画面つくりがとても気持ちよく面白くて、とても好きです。でも他の審査員の支持がなかった。ありふれているようでこのように気持ちいい貼り絵の味はなかなか出せるものではない。これからも頑張ってください。
受賞者のみなさん、受賞に及ばなかったみなさんも、これからも頑張ってください。自分でこれならいいと思いダミーを作っても、私だって全て採用されるわけではありません。没になる作品もいっぱいありますよ。創作とは厳しいのです。めげないでこれからも期待しています。
みやざき ひろかず
大賞『おばけのランタン』…モノトーンの線画がクラシカルなのになんだか新鮮で魅力的。おはなしは不思議で想像力が刺激されます。とくに大きなドラマがあるわけではないのだけれど何だかわくわくします。ただ「ランタン」としての意味合いがよくわからなくて読後に「?」が。もっと作者が伝えたい「何か」が感じられたらよいな…とおもいます。
優秀賞『あるひこたつがいいました』…くっきりした絵、シンプルでわかりやすいおはなし。ほのぼのとして楽しい気分になります。せっかく「こたつ」が外の世界に出たのだから鳥や犬ではなくもっとワクワクドキドキの非日常な体験をさせてあげたかった。
佳作『そんなのやだよ』…個性的で力強い絵、色彩がとても素敵です。次はストーリーのある絵本にチャレンジしてほしい。
『シャワーバケーション』…とてもユニークな絵が心に残ります。おはなしも楽しい!人物の描写にも同じようなユニークさがほしい気がします。
『えいゆうのせきぞう』…魅力的な作品です。大きな主人公の石像が白っぽくて存在感がないのがとても残念。
『おひるねびより』…素直で丁寧な表現、美しい水彩画が魅力的。おはなしにもう少し新しさや意外性がほしいような…
「ピューンととぶ きんのすけ」…大胆な構図とちぎり絵が魅力的です。ちぎり方がすこし丁寧すぎるかな?
宮下 恵茉
今回から審査の規約が変更になったので、応募作が減るのではとの懸念もありましたが、変わらずたくさんの作品が集まり、審査員一同、ホッと胸をなでおろしました。
そんな中、審査員のほぼ全員が推した『おばけのランタン』が大賞に輝きました。おめでとうございます! とても魅力的な絵柄で、誰もが共感できる、完成度の高い作品でした。きっと多くの読者の心をつかむ一冊になるでしょうね。発売が楽しみです!
優秀賞の『あるひこたつがいいました』もユニークでバランスがよい作品でした。こたつの動きがとてもかわいくて、きっとこどもたちにも愛される作品だろうなと思いました。
個人的には『えいゆうのせきぞう』が今の時代にぴったりで好きな作品でした。『そんなのやだよ!』にも多く票が集まりましたが、絵本としてはもう少し工夫があるとなおよかったという意見もありました。『おひるねびより』はやわらかなタッチの絵に、心温まるユーモアがマッチした作品でした。『シャワーバケーション』はシュールな作風で、思わずくすっと笑う展開に新しさを感じました。『ピューンととぶ きんのすけ』はちぎり絵が魅力的な作品。ラストが唐突だったので、もうあとすこしエピソードのつながりがあると評価があがったのではないかと思います。
また惜しくも佳作には入りませんでしたが『よふかしマオのおたんじょうびプレゼント』は店頭にあれば思わず手に取りたくなるようなかわいらしい絵柄で好感が持てました。ストーリーにあと一工夫あると入賞につながったのではないかと思います。
毎回感じることですが、絵に比べテキストがおざなりになっている作品が散見されます。
絵本は絵とテキストどちらも大切。絵だけでなく、ストーリーの構造も意識した作品作りが求められています。ちょっとひっかかるなと思ったら、思い切って展開を変えてみたり、エピソードの順番を変えてみたり、ぴったりくるバランスを見つけてください。
次回もたくさんのあたらしい絵本に出会えるのを期待しております。
森 貴志
大賞の『おばけのランタン』は、審査員ほぼ全員から評価されました。落ち着いたトーンで静かに展開するおしゃれな雰囲気をもつこの作品は、読者対象の輪郭がややぼやけた印象があり、子ども向けの「絵本」として出版するには検討する要素があると考えられますが、今回のダントツでした。ページの使い方にも変化があり、全体の構成のバランスもよいと思います。
優秀賞、佳作の選考は、なかなか難航しました。
優秀賞の『あるひこたつがいいました』は、こたつが話し、動き出すという奇想天外な設定で、こたつは家を飛び出し、外の世界を走りまわります。絵がユーモラスで、最後は気分があたたかくなる物語です。見開きごとの展開にリズムがあり、テンポよく読むことができます。
今回はなぜか、ランタン、こたつ、シャワー、せきぞう(石像)と、本来は動くはずのないモノが動く設定が多かったように思います。こういった傾向は興味深い一方で、その新規性や必然性が問われます。
前回からさらに応募作数が増え、たいへんうれしく思っています。ただし、今回は佳作のなかでも審査員で意見の分かれているものがいくつかあり、全体の応募作数と質(レベル)が比例しているとは必ずしもいえないと思われます。毎回の審査会で「絵本」とは何かをあらためて考えることになるのですが、「絵」と「ことば」のいずれかが優れていても「絵本」にはならず、その両方の表現によってある世界が読者に伝わったときに、「絵本」というメディアの魅力が生まれるのだと思います。次回も「あたらしい創作絵本」が多く届くことを楽しみにしています。
創作絵本大賞 事務局
今年より参加費が変更になり、応募者が減少するのではと心配していましたが、昨年より多くの作品が届きうれしかったです。
年々、応募作品のレベルが高くなり、開封して読むのがとても楽しかったです。
みなさん作品のまとめ方がうまくなったぶん「これどこかで読んだかも?」という既視感のある作品も多くありました。
残念ながら入選にはなりませんでしたが『おおうさぎさんとおもち』は、ページのめくりを意識した構図や色の使い方は好感度が高かったです。「おもち」と「うさぎ」では、先の展開がよめてくるのがもったいなかったです。他の人が思いつかないようなネタで応募いただけるといいですね。『カピバラおんせん』も絵の描き込みが細かくて絵探しがおもしろい作品でした。ただ温泉ネタは多くの作品に使われていることもあり、新鮮さに欠けたのがもったいなかったです。
作者にしか思いつかないような作品、あっとおどろくような作品をお待ちしています。
来年も、あたらしいアイデアの作品をお待ちしています。
主催:梅花児童文学・絵本センター
共催:アミーニ(運営事務局) 梅花女子大学 児童文学科・こども学科同窓会
協賛:梅花女子大学 株式会社未来屋書店
協力:ひかりのくに株式会社