第14回あたらしい創作絵本大賞 審査結果

 第13回あたらしい絵本大賞

大賞作品は、出版されます。
あたらしい創作絵本大賞は、こどものためのロングセラー絵本を創作する人を発掘していくコンテストです。

たくさんのご応募ありがとうございました。
今年はひさしぶりに対面での審査会を開催することができました。
表彰式と合評会は7月8日(土)に開催します。
第14回あたらしい創作絵本大賞 表彰式&合評会のご案内

各賞の審査結果は以下の通りです。

大賞
「じゃがいもめがね」まきの みそら

●プロフィール
2001年生まれ、東京都在住。武蔵野美術大学4年次に在学中。都立総合芸術高校音楽科卒業。
「くるくるさん」が幻冬舎グループ「第3回絵本コンテスト」にて大賞を受賞し、デビュー。
イラストやグラフィックデザイン、絵本制作など幅広い分野で活動中。
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●受賞コメント
人前で発表するとき、失敗を想像したり、人目を気にし過ぎてしまう子は、「想像力が豊かである」とも言い換えることができます。
そんな子に『じゃがいもめがね』を渡せば、簡単に人がじゃがいもに見えてしまうでしょう。
私は音楽をずっと続けてきて、ピアノやフルートの発表会、オーケストラの演奏会など……多数の舞台を経験してきました。
しかし2020年、コロナ禍により無観客やリモートでの演奏会が増えました。その経験から感じたことは、お客さんの顔が見えることの安心感です。怖いのは人前に立つことではなく、自分のことを見てくれる人が、誰もいなくなることだと気づきました。
そんな気づきから生まれたこの絵本、子どもから大人まで、楽しんで読んでいただけると思います!


■優秀賞
「つないで つないで」長谷川 あかり


佳作 4作品
「よぞらのスイッチ」辻原 謙一
「みちかけドレス」ほちょ
「きせつのバトン」よしおか ゆきこ 
「はなよ! さけ! さけ!」サワイ ワタル
「ちびフクロウの大じゃんぷ!!」しあき ようこう


■おしくも選外
「つきをたべたい」たなか なか

作品選考の際には、審査を公平にするため、作者プロフィールは確認せず、作品のみを読んで審査しています。

審査員総評(50音順)

香曽我部 秀幸
絵本制作の最大の原則は絵(え)と詞(ことば)の融合表現です。絵では描ききれない微妙なニュアンスを詞がどのように補うのか、あるいは絵で十分に情景が語られている場合は、詞をどこまでそぎ落とすことができるか。この絵と詞の融合が今回の応募作品では大半が不十分でした。
さらに絵本の物語作りは大変難しいものです。ただ単に起→承→転→結が整っていればよいというのではなく、お話の展開が読者にワクワク感、ドキドキ感を与えるものでなくてはなりません。一見面白そうな題材であっても、独りよがりな飛躍がありすぎると読者はついていけなくなるし、淡々と場面を重ねるだけではありきたりの予定調和的なお話になってしまって、読む者に感動や驚き、喜びを与えることはできません。

そんな中にあって大賞受賞作品は、失敗を恐れて積極的になれない子ども特有の悩み(大人にもありがちのことですが)というテーマを分かりやすく視覚化して読む者の心を捕らえました。なおすべき個所は多く、未完成ではありますが、今後の努力次第で素晴らしい作品に生まれ変わることを期待します。


長野ヒデ子
今年もとても新鮮な作品がたくさん応募していただき、うれしくなりました。ありがとう。
でも「もう少しここを…。もう少し、ためたものが欲しいなあ……」と思う作品が多く惜しいなあと思いました。
作品にはその人の人柄が全部出てしまいます、なにより自分をよく見つめることが、作品をよく見つめることに繋がります。
でも難しい。読者も体で受けとめてくれるので、体から湧き出るものを作品にしてください。

大賞の作品はとても面白がったのですが「少々甘すぎるなあ……」と思うところは、これからの課題です。そこがなにより今後の成長が期待され、とても楽しみですよ。


みやざき ひろかず
ストーリーにやや疑問が残る作品が多かったようです。大賞の『じゃがいもめがね』は、絵がとても魅力的。物語は作者の意図がどこにあるのかよくわからない展開にちょっと戸惑います。
優秀賞の『つないでつないで』は、完成度は高いのですが、読んだ時の驚きや新鮮さにもの足りなさを感じます。最後にできあがった毛糸の作品にもっと感動や仕掛けがほしかった。佳作の『よぞらのスイッチ』は絵の雰囲気がとてもすてきです。小さくまとめるのではなく世界がもっと広がってほしい。『はなよ! さけ! さけ!』は、ラストシーンですこしとまどいますが絵のユニークさはとても魅力的。『きせつのバトン』は、柔らかく優しい絵に癒されます。『みちかけドレス』『ちびフクロウの大じゃんぷ!!』は、それぞれに画力が素晴らしいと思います。


宮下 恵茉
今回は、審査員がよいと思う作品が割と固まっていたように思います。ただまとまってはいるけれど、突き抜けた個性がないという意見が多数あり、審議を重ねた結果、瑕疵はあるもののキャッチーな画風とタイトルに魅力があった『じゃがいもめがね』が大賞を射止めました。ご受賞、おめでとうございます!

大賞を逃した作品にも発想の新しさ、アイディアの良さが光る作品も多くありました。ただその魅力を伝えるためのストーリーラインが弱かったのが残念なところです。とはいえ、回を重ねるごとにすてきな作品が多く集まるようになってきたので、毎回審査を楽しみにしています。個人的には『みちかけドレス』『よぞらのスイッチ』『つないで つないで』は可能性を感じた作品でした。みなさん、ご受賞、おめでとうございます!


創作絵本大賞 事務局
久しぶりに審査員が全員集まって審査会を行うことができました。年々、絵のすばらしい作品が増えてきて、読むのが楽しくなっています。
一方で、過去作品の傾向と対策を練っているのか、それとも、他社の天体系の絵本コンテストで落選した作品を応募されているのか、天気や気象、天文に関する作品が多くよせられます。天気や気象系の作品を好んで選んでいるわけではなく、作者の伝えたいメッセージや思いが絵本に込められているかどうかが判断基準になります。ただし、作者のメッセージが前に出すぎて、標語や道徳的な作品になるのは避けてもらいたいです。

大賞に選ばれた、まきの みそらさんは、第13回『バナナいつたべる?』で佳作を受賞。第14回の大賞受賞作では、コロナ禍の不安を「じゃがいも」にみたてて表現されています。出版までに書き直す部分もありますが、作者の思いが絵本に投影されていました。おめでとうございます。



主催:梅花女子大学
共催:梅花女子大学児童文学科・こども学科(児童文学・絵本コース)同窓会、アミーニ(運営・事務局)、梅花女子大学こども教育学科
協賛:株式会社未来屋書店


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